今週の山頭火句

今週の山頭火句 旅のかきおき書きかへておく  山頭火

2017年8月17日木曜日

『第23回山頭火俳句ポスト賞』の表彰!

『第23回山頭火俳句ポスト賞』を表彰しました。

山頭火俳句ポストの表彰も23回を迎えます。                 
表彰式は、8月5日(祝・土)「一草庵夏の子ども祭り」におこないました。


俳句ポストへ
平成29年3月1~6月30日に投函された句です。
                                     
  一草庵の「山頭火俳句ポスト」に投句された俳句は、156句。
  (内、県外句は25。)藤沢市、横浜市、千葉県南房総市、茨木県大洗町
   さいたま市、島根県浜田市、徳島県板野郡、新居浜市等、投句の中より、
   各選者の先生に優秀句を選んでいただきました。
 
                      
山頭火俳句ポスト大賞
ゆれるだけ揺れて飛べない猫じゃらし 松山市 岩崎美世
【評】「ゆれるだけ揺れて飛べない」のは猫じゃらし。それはそれで可笑しいのだが、「ゆれるだけ揺れて飛べない」のは作者でもあるだろう。猫じゃらしが飛べないのは可笑しいが、作者が飛べないのは笑えない。作者だけでなくほとんどの人間はゆれるだけゆれても飛べないのだ。人間存在の淋しさ、せつなさを詠ったのが、まさに山頭火である。(小西)

山頭火一浴一杯賞
蛇の衣見し夜のこむら返りかな     松山市 酒井裕子      
【評】白昼に見たと思われる「蛇の衣」。それを財布に入れておくとお金が貯まるとか、箪笥の引き出しに入れておくと着物が増えるとかの俗信があるが、作者は、夜になって、すっぽりと蛇が衣類を脱いだような形のものを思い出し「こむら返り」を起こしたのである。辞書によれば、こむら返りは、過労が原因で、冷水、冷気など寒冷ストレスで誘発されるとあるから、ゾッとするような衝撃の程が想像されるが、「かな」止めの詠嘆効果により、俳諧味のある句となっている。(白石)


山頭火柿しぐれ賞
星降りてあまた螢となりにけり    松山市 古沢登美子     
【評空気の澄んだ山間部は、見上げると星が降りそうなほど美しい。
そして、無数の螢が舞い始めた。螢はまるで星が降ってきて、そのまま
螢になったのかも知れない。いや、本当に螢になったのであると断定した。
螢の最期は、スーと天へ昇って星になるのだろう。日本中に、このような
景色をいつまでも残したいものだ。(本郷)

小西昭夫選
【特選】水玉が揺れ紫陽花の赤と青    松山市 青木野良
 【評】雨と紫陽花の取り合せはあまりにも月並。しかし、雨上がりの状態を雨という言葉を使わずに「水玉」で表現したことがお見事。雨上がりの庭の紫陽花の葉の上で「水玉」がゆれる。その紫陽花の色を「赤と青」と言い切ったことも気持ちがいい。
【入選】掃除機が迫る畳の落花かな     松山市 岡崎 唯
【評】すぐそばに桜の木があるのだろう。その桜の花びらが畳の上に落ちている。掃除機を使っているのは、作者とも、作者はそれを見ているとも読めるが、畳の上の花びらは今まさに吸い込まれようとしているのだ。花びらを見つめる作者。「迫る」が上手い。
白石司子選
【特選】考古館埋もれしものへ朴散華   松山市 長澤久仁子
【評】遺跡、遺構、遺物などから人類の歴史を知ることのできる考古館。作者は古い時代の生活や文化に触れることにより、どんなに研究が進んでも、未だに知られずにいる「埋もれしもの」への思いを深くしたのである。散ることも無く、頭上高く朽ちゆく「朴散華」という季語の斡旋が見事だ。

【入選】じいじのかわりにきてみたよ一草庵 浜田市 元田あつき
【評】本当はじいじが来たかったのに、何か事情があって君がかわりに来たんだね。この句には、季語は無いけど、春の気配が感じられ、じいじが君に山頭火さんや一草庵の話をしている様子や、君がみてきたことを嬉しそうにじいじに報告している様子が伝わってきて、何となくあったかくなる。今度は、じいじと一緒に来れるといいね。

本郷和子選
【特選】蛇の衣見し夜のこむら返りかな  松山市 酒井裕子
【評】蛇は6、7月頃、上皮を脱ぎ、長くそのままのもの、ちぎれたもの
が草の茂みの中に残っている。蛇の殻、脱殻、蛇の衣(きぬ)と言う。
青大将のように長さ2メートルほどのものもある。多くの脱殻は、白っ
ぽくレース状、網目などになり、動かぬとはいえ気味悪いと思う人も多い。
作者は昼間それを見て、夜中こむら返りを起こしたのだ。蛇に対する恐怖
心が心理的に作用したのか。蛇の衣とこむら返りを取り合わせたことが巧
み。虚子の「蛇の衣傍にあり憩ひけり」という句と対極にあると思う。

【入選】田から田へ走る水音夏近し    松山市 古沢登美子
  【評】田植え前後、川から田へ、田から田へと水を流す。稲作には貴重な水である。「走る水音」によって水の早い流れ、その音までも想像できる。結句「夏近し」で時期も想像できる。類句はあるかも知れないが、これはこれで、きちんと作句できている。

 熊野伸二選
特選】星降りてあまた螢となりにけり   松山市 古沢登美子
【評】山峡の夜は真の闇。空には銀河が横たわり無数の星がきらめいて
流星も垣間見える。暗闇にゆらめき始めた螢たちも、もしかすると流れ星の化身かもしれない。きっとそうに違いない―と作者は「なりにけり」
   と断言している。その思い込みが浪漫だ。

【入選】遅遅なるは頑なな意志かたつぶり 松山市 西野周次

【評】「蝸牛」の歩みは真に遅々たるもの。「もう少し早く歩めないの?」
といわれ続けていようか。しかし「蝸牛」にとっては迷惑至極。遠い先
  祖が「人生そんなに急いでどこへ行く。ゆっくり歩こう」と決め代々
その意志に背くことなく守っている。