今週の山頭火句

今週の山頭火句 すわれば風がある秋の雑草  山頭火

2012年12月25日火曜日

人間 種田山頭火と尾崎放哉

クリスマス・イブ、24日、NHKで「今なぜ人気?俳人山頭火・魂の言葉 竹中直人が魅力にせまる」が全国放送された。
 この山頭火倶楽部のブロクのアクセスが、一挙 1300件以上跳ね上がった。
テレビにも登場した山頭火案内人
そして、一草庵にも、四国遍路の旅で、一草庵に立ち寄ってくれた出演者・黒澤幸子さんからも電話をいただいた。

今年の一草庵の公開日は、24日が最終日だったので、仲間と一緒に掃除をしたり、新年の設えをおこなった。 高知からNHK松山放送局の「濁れる水の流れつつ澄む」(11月2日)の放送を見て、今年中に一草庵を訪れたいと二人の女性の訪問があった。
山頭火の縁に結ばれて、楽しく語り合えることができた。





「今なぜ人気?俳人山頭火」、それを象徴するかのように、
今年の最後、徳間書店から TOWN MOOK 「人間 種田山頭火と尾崎放哉」が出版された。(12月24日)
松山での写真撮影に協力した。11月21日のことだから、突貫工事の出版のようだ。
  金子兜太さんと早坂暁さんのインタビューの記事も掲載されていて、この一冊で山頭火と放哉の全貌が掴めそうだ。
 山頭火関連では、他の雑誌には、紹介されていない新しくできた山頭火の句碑を紹介してくれたのが嬉しい。


来松70年を記念して作られた高浜の山頭火句碑
「秋晴れひよいと四国へ渡つて来た」



石手寺沿線に出来た山頭火句碑
「分け入つても分け入つても青い山」
一番嬉しかったのは、一草庵の山頭火句碑
      鉄鉢の中へも霰  山頭火
を大きくクローズアップして紹介してくれていることだ。

このような素晴らしい書をかけるのは、ただの酒飲みではないことが、すぐに解る。
5音7音と区切るのだろうか 9音3音で区切って読むのだろうか。
 鉄鉢を象徴しているのか、霰を象徴しているのか。
やつぱり テッパツを象徴しているのでしょう、5音7音で区切って読んでみよう。
山頭火は、区切って読んでもらいたい俳句には、句読点を意識的に挿入している。
  うどん供えて、母よ、わたくしもいただきまする
  花いばら、ここの土となろうよ
  秋風の、水音の、石をみがく

 高知から来た女性の方にも、鉄鉢の句を観賞してもらった。
  ①黒染の衣姿に、孤独の塊のような白い霰
  ②テッパツの中に霰の音
  ③その音を身体で、心の読みとる山頭火の姿
  ④玄界灘の寒い風に吹かれて、鉄姿の中へは白い米だけでなく
   白い霰を入るのだと世の無常を感じて旅去るうしろ姿
  そんな話をコーヒーを飲みながらしました。

 読売新聞・日曜版の名言巡礼(2011.12.23)
  ゆく河のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず
 宇佐美さんが紹介している。
 800年前に約8600字の随想「方丈記」、源平の争乱の世相を読む。

 山頭火は、世界的な戦争の起る中、次の句を詠む。
  濁れる水の流れつつ澄む

 そして、東北大震災、原発事故に対面した現在人は、山頭火のテレビをみて
 この山頭火の句に、無常感と希望を確信する。
 宇佐美さんが、今回の名言巡礼でキャッチしたのは、次の言葉です。
  無常の中に希望を見る

 片付けが終わり、一草庵を出ると、
その前の川は澄んで、白い鷺が遊んでいました。

2012年12月20日木曜日

NHK松山放送局製作の「濁れる水の流れつつ澄む ~山頭火 魂の言葉~」が全国放送されます。

韓国の俳人たちが、一草庵を訪れたのは、12月16日だった。
その時、来庵されていたAさんのブログを見せていただいた。
以下、その内容を追加として、紹介させていただきます。
<そういえば、郭さんは、このようなお話をされていた。>

韓国における日本文化と言えば、やはり漫画が第1位。

俳句は第11位なのだそうだ。相撲が10位、芸者は12位だと紹介された。
子供たちの9割が学ぶ第二外国語としての日本語。1割ほどが中国語らしい。英語は必須である。

ご本人は大学で25年間教鞭をとり、芭蕉で学位を得た文学博士である。もっとも芭蕉は、哲学とみなされているいるらしく、山頭火などのほうが受け入れられやすいとも、紹介された。
今は「韓国俳句研究院」院長である。

2時間ばかりの豊かな時間を過ごしての一草庵の落書き帳には、
即席で「きのう雨 今晴れてから 山頭火」と記されていた、とのこと。

頂いた韓国俳句集「蔦」を見ている。
こんな俳句が紹介されていた。
皆さんいかがでしょうか。

冬の星二人暮らしのありがたさ      郭大基
農村の屋根は真つ赤だ唐辛子      金景在
一人旅嬉しきお客枯葉かな        金秀聲
窓際の陽ざし明るしシクラメン      金重燁
かじけ猫優しく眠らすガラス窓      金重燁 
人生と落葉流れる水の上          徐主甲
あの月や過ぎし昔の鏡かな         徐主甲  
ジャヤンケンに氷すべりの母子かな 朴廷苑
横町にきよろきよろと秋の月       朴廷苑
ゆつたりと思い出ひたるユズ湯かな 朴相煕


そんな時、NHK松山放送局の山田さんからメールが届いた。
松山放送局製作の山頭火番組が全国放送することになったというニュースです。
全国の皆さん、是非是非、ご覧下さい。

12月24日(月・祝)午後6時10分~6時45分
「濁れる水の流れつつ澄む ~山頭火 魂の言葉~」
http://www.nhk.or.jp/program/holidaydoc/



「濁れる水の流れつつ澄む」の撮影風景

竹中直人さんが、こんなサインをしてくれていました。

2012年12月17日月曜日

韓国の山頭火と言えば、放浪詩人・金笠(キム サッカ)

一草庵に、韓国慶州から韓国俳句研究院院長の郭大基さん、ほか金秀聲、本郷民男さんが訪問された。

右・郭大基さん、左・本郷民男さん


郭さんは、日本固有の伝統文化に触発され、私財を投じて韓国俳句研究院を創立し、俳句講座・俳句大会を通じて日韓の文化交流を推進されている。

日本語はペラペラ、韓国・日本の文化にも通じていて、ビックリした。
日本語で綴られた句集をいただいた。
韓国の大学生は、英語は誰でも話せ、第2外国語として、日本語を勉強しているため日本語にも堪能であるとのことです。

こんな俳句を紹介してくれました。

空腹の午後 目で食べる ヒトツバタゴの花
「ヒトツバダゴ」 とは、 「ナンジャモンジャ」 の花のことなのだそうです。
松山でも、ナンジャミンジャの木はあり、5月頃東雲神社で粟粒のような白い花が咲いています。

「배고픈오후  눈으로먹는다네  이팝나무꽃」

 <5文字>   <7文字>   <5文字>  

韓国語では、5文字、7文字、5文字 ハングル文字の数で、五七五で表現しますが、    
日本語で俳句は作られるようです。
「花にご飯を連想し、貧しい時代にも思いをはせ、
自然と対話する作者の姿が見えてくるそうです」<郭先生>

郭先生の句をお聞きしました、冬の句を。
一人ずつ一安心や年賀状   郭大基

そして、山頭火の句を韓国で紹介してくれているのです。
うどん供えて、母よ、わたくしもいただきまする」の韓国語の説明文もみせていただきました。
そして一番印象的だったのが、朝鮮の山頭火とも呼ばれる
金笠(キムサッカ)1807ー1863のお話でした。

韓国の放浪詩人・金笠
本名は炳淵(びょんよん)。
いつも笠をかぶって、全国津々浦々を放浪したしたので、金笠(キムサッカ)を呼ばれているそうです。名門の生まれなのだが没落後、22才で妻子を残し出奔。24才で一時家に帰るが再び家出。57才で路傍に倒れるまで家に帰ることはなかったそうです。
その生涯の悲劇性にもかかわらず、その詩は鋭い風刺とユーモアを湛え、死後150年を経た今も韓国の人の心を捉えつづけています。
権威を嫌い、酒を愛し、自然の心を詠いながら路傍に果てた旅人、日本の山頭火のような人が、すでに朝鮮にいたのです。
金笠(キムサッカ)を語りながら、山頭火を語ると、韓国の人は共鳴するそうです。
※日本においては、朝鮮を旅行中だった三好達治が「金笠詩集」読み、「漂泊詩人金笠に就て」という評論を雑誌『文学界』に5回にわたって発表している。
芳賀徹氏、李御寧氏、有馬朗人氏
第4回国際正岡子規俳句賞スエーデン賞を受賞された
李御寧氏を思い出した。
2009年2月15日の愛媛会場レセプションでお話する機会を得た。

李御寧(イー・オリョン)氏は、
「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」。柿を食ったら腹が満たされた、あるいは柿を食ったら腹が冷えたというならわかる。先生なぜ柿を食ったら鐘が鳴るのですか? と学生に言われる。
韓国人には、何の句か誰もわからないだろうと言われて、自分で研究し始めたそうだ。
 夕焼の空に柿が染まる、鐘の音はいつしか消えてゆく、しかし建築物としての法隆寺は消えることなく、そこに存在しつづける、そんな宇宙観を詠っていると説明してくれたように記憶する。

李御寧氏には、名著「縮み」志向の日本人 」がある。
「盆栽、生け花、床の間、四畳半、一寸法師、ウォークマン
日本人はなぜ「小さきもの」が好きなのか。
日本の縮小志向の代表的な例が俳句にあらわれていることに気がつき、
俳句の国の文化にメスを入れる。

最後になるが、今回の旅の目的は、俳人・村上杏史を訪ねる松山紀行の様だ。
村上杏史先生は、松山市中島町の生まれ、瀬戸内海に浮かぶ島・中島。
韓国木浦に居住(15年間)して、新聞記者を務める。
朴魯植に俳句を奨められる。
清原枴童を木浦に迎え、昭和23年福岡で亡くなられるまで指導を受ける。
木浦にて、俳誌「カリタゴ」の創刊に参加。
松山に帰郷して、俳誌「柿」の創刊に参加。
「清原枴童(かいどう)全句集」「朴魯植(ろしょく)俳句集(高浜虚子に認められたが、36歳で早世)」を刊行。
   蝶とぶや観世音寺の鐘遠く  枴童

 まだ、千秋寺の杏史先生の句碑を見ていないとのことなので、案内した。
勿論、長建寺の山頭火の句碑も見ていただいた。
「金色の仏の世界梅雨の燈も 杏史」
の句碑の前で、金秀聲さんと本郷民男さん
本郷さん曰く、杏史先生は、韓国で俳句を始められ、朴魯植先生、清原枴童先生亡き後も、韓国の俳句を指導し、自費で二人の先生の句集を出された。
韓国俳句の恩人であり、韓国との文化交流の先駆けの人ですと。
 探していたら、杏史先生の短冊が出て来たので、紹介しておきます。

酔妓生起ちて倚りたる桜哉
沖まねき山招きして踊の手
取材してくれた愛媛新聞の高橋さんが、記事にしてくれましたので、掲載します。

2012年12月2日日曜日

Stay hungry. Stay foolish.

生誕130年記念の第21回全国山頭火ファーラム・防府へ行ってきました。<2012.12.1>
その模様を報告します。
 中村敦夫さんの山頭火物語「鴉啼いてわたしも一人」が、2時間に渡る熱演で繰り広げられました。
 民藝の佐々木梅治さんが、山頭火をテーマごとに紹介し、中村敦夫さんが、山頭火になりきって想いを語ります。
敦夫さんは、懇親会の会場で、質問に応えて「近代は経済成長至上主義で環境を破壊し続けている。漂泊行脚の旅の中で、近代の生き方に疑問を持った山頭火の生き方に共感した」と言われました。 





 新しく「山頭火ふるさと会」の会長になられた西本正彦氏の言葉が印象に残ったので紹介しておきます。

山頭火は9歳、小学3年生の時に母を亡くする。
父は政治、女性に入れ込んで種田家をつぶす。
愛しい母を想い、信じられない父の元で、社会に生きる力を持たず、母の愛も知らず、それを酒に求め、生まれながらに素直に生きた。
失敗をしても起き上がり
名をなしても、いばらず
私は、これを「おきあがりこぼしの山頭火」と言ってますとのこと。
山頭火の生き方は、日記にも書いていますが…
愚にかへれ、愚を守れ、愚におちつけ <山頭火>
の人生だった。
突如、ジョブズの話しが飛び出します。
あのアップル社、ipod・ihone・ipadを世に出した故スティーブ・ジョブズです。
彼が、スタンフォード大学の学生に送った言葉「Stay hungry Stay foolish.」(ハングリーであれ、バカであれ)
この言葉は、山頭火の愚と同じだ。
会場には、秋山巌さんのこんな肉筆の絵が飾られていました。
何事にも執着せず、頭を空っぽにして、一途に勉強しつづける山頭火の生き方と同じだと、言っていたと感じ取りました。

あなたも、愚を守る・山頭火の生き方を、もう一度読みとってみませんか。

<追伸>
ジョブズの座右の銘「Stay hungry. Stay foolish.」についていろいろと考えさせられた。
①PRESIDENTの10月29日号 人生が変わる「仏教」入門。
S.ジョブズ氏と曹洞宗の禅との関わりの記事あり。
ジョブズの一貫した製品作りのポリシーには、道元禅師の教えが生かされているという
「実徳を蔵して、外相を荘らず(内面をよくして外面を飾らない)」という思想。
そしてジョブズの思想は、禅から学んだ「もてなしの心」だったという。
<飾らない山頭火の生き方とよく似ているようだ。>

②追跡者 ザ・プロファイラー
 「スティーブ・ジョブズ “シンプルに、前へ”」 の放送があったようだ。
 日本人の僧侶が、ジョブズの価値観に影響を与えてたという。
 その人の名は、曹洞宗の禅僧・乙川弘文。
 ジョブズ氏率いる米NeXT社の「宗教指導者」に任命され、ジョブズ氏とローレン・パウエルの結婚式を司った。
 <ジョブズと乙川弘文の交流をコミック化『The Zen of Steve Jobs』は、米国で、日本では、集英社インターナショナルから今年2月に刊行さてているという。>
ihoneのタッチパネルのガラス、そのデザインは、シンプルで美しい。
 ジョブズのモットー「集中とシンプル」。
 山頭火が求めた単純に徹する俳句にも通づるところがあるようにも思えてきた。