今週の山頭火句

今週の山頭火句 すわれば風がある秋の雑草  山頭火

2012年4月24日火曜日

『第7回山頭火俳句ポスト賞』決定発表

『第7回山頭火俳句ポスト賞』が決定しました。
(投句期間 23年11月1日~24年2月29日)
一草庵「山頭火俳句ポスト」に投句された157句(内、県外句は70句)。
各選者の先生に優秀句を選んでいただきました。
「第6回俳句一草庵(4月28日)の日」に表彰。
今回は、県外の人が沢山選ばれ、「俳句ポスト」も全国区になってきました。
 
山頭火俳句ポスト賞
赤シャツ着て高浜を去る   松山市 堀口路傍

(評)夏目漱石の「坊っちゃん」の面白さの一つはあだ名の見事さ。教育大學出のインテリの教頭のあだ名が「赤シャツ」。生徒たちは「赤シャツ」というあだ名を付けることで、教頭を自分たちと同じレベルの人間に引き下げたとも言えるのだが、それは「赤シャツ」の力を自分たちが身に着けるための手段でもある。高浜を去る男はまぎれもなく「赤シャツ」の力を身に着けているはずだ。(小西評)

小西昭夫・選
【特選】かごめかごめうしろの正面春の地震  松山市 村上邦子 

(評)童謡の「かごめ」はぼくも何度も歌っているが、その歌詞の意味はよく知らない。ただ、夜明けの晩に鶴と亀という目出度いものが滑るのだ。夜明けの晩という表現も、目出度いはずの鶴と亀が滑るのもなんとなく不吉。この歌で子供たちが無邪気に遊んだことが不思議だが「うしろの正面」は鬼である。東北大震災のあとでは「春の地震」が何とも不気味だ。

【入選】齢なんてと言いながら女房のサプリメントを飲む 松山市 堀口路傍

(評)季語もなく長律であり、一行詩として最も俳句と切れているところが評価できる。しかし、この句のもつ滑稽さは、やはり俳句を意識したものだろうか。

白石司子・選
【特選】黄落の俳都に降り立つ土踏まず  神戸市 平井幸子

(評)美しく黄に色付いた葉もやがて散り始める頃となった晩秋に、俳句のメッカを訪れた作者。
「降り立つ」に「土踏まず」は、即き過ぎかもしれないが、中七で切れると考えれば、単なる説明ではなく、句に深みが生じる。
俳句を志す者にとっては憧れの地である俳都・松山への感慨を先ず「蹠(あなうら)」に感じた、いや、足裏のくぼんだところ「土不踏(つちふまず)・土不付(つちつかず)」であるから、俳都に降り立ったけれども、その奥行の深さには充分に踏み込み得なかったという解釈でいいだろうか。身体の一部である「土踏まず」の捉え方によって、読者の想像力が広がってくる作品である。

【入選】ときに淋しい子規の遺影よ今年竹  神戸市 原尚子

(評)子規といえば横顔で、私自身も作品にしたことがあるが、この句では「ときに淋しい」の口語調の切り口が新鮮。また、呼び掛けの助詞「よ」も効果的で遺影に話しかけている作者像が浮かんでくる。
今年も大きくなった筍は、皮を脱いですがすがしい緑の竹となるが、いつもと変わるはずのない「子規の遺影」は、ときとして淋しい。もちろんそれは最短定型詩である俳句の道を究めようとすることへの作者自身の心細さ、荒涼感でもある。

本郷和子・選
【特選】綿虫を誘い出したる山頭火  埼玉県越谷市 屋内修一

(評)晩秋から初秋にかけて飛び、綿くずのように見える昆虫。山頭火が誘って放浪
の旅に出たのか、逆に綿虫に誘われて山頭火が旅に出た方が、内容が深くなる。
「綿虫を」を「が」叉は「の」に一字変えることでもおもしろい。
どちらにしても発想はユニークである。

【入選】一草庵を守るつもりの冬の蜘蛛  大阪箕面市 小池万里子

(評)蜘蛛は年中見るが、冬にはあまり活動しない。作者は、一草庵の軒下か廊下の隅に、じっと動かぬ蜘蛛を見つけたのであろうか。だれもいない庵を蜘蛛が一匹、住人のように居を定めているのだ。いかにも庵も守るつもりでいるかのように。
冬の蜘蛛だからこそ、守るという表現が生きてくる。

熊野伸二・選
【特選】 豊の秋仁王に余る大草鞋    松山市 三好真由美

(評)お寺の仁王門に掛かる大草鞋を詠んでいる。五穀豊穣を謝して奉納されたのでも
あろうが、畳一枚超の巨大草鞋で、例え丈六の仁王様にも「余る」大きさ。
滑稽を秘めた安定感のある句。

【入選】大寒の両足湯桁に放ちけり   山口市 吉次薫 

(評)年中で一番寒い季節。つま先が痺れるほどに冷たい両足を、足湯に浸す心地よさ。
「湯桁」は、浴槽のまわりの桁、転じて湯槽そのものも指す。「放ちけり」の下五が、
解放感を強調して、効果的。

一草庵若葉賞
冬の夜毛布と夢に包まれる  松山市 村上紗耶(12歳)

(評)いかにもふんわり、ほんわかと暖かい毛布の感触が伝わり、いい夢も見られそう
な感じ。ぐっすりと眠って幸せな子供さんでしょう。(本郷評)
「俳句ポスト賞」表彰式

2012年4月20日金曜日

「第6回俳句一草庵」、俳句募集のお知らせ!

「俳句一草庵」の投句締切、もうすぐです。ー 4月21日(土)
全国の皆さまへ、メールでも受付マ~ス。  E-メール santokaclub@gmail.com
 (FAXでもOK、089-978-5959)
 
28日当日は、松山美女軍団の俳句ファッション・ショーも開催します。


「春の俳句一草庵」を4月28日(土)、ゴールデン・ウィークの初日に開催します。
春は、俳句募集を、秋は、吟行俳句を実施している「俳句一草庵」も、第6回を迎えます。


昨年春の「俳句一草庵賞」
野良猫が春の扉を開けて来

 【日 時】 4月28日(土) 13時~16時

 【会 場】 一草庵(松山市御幸1丁目)

 【内 容】 事前募集俳句を当日に選者・参加者が一緒になって公開選抜。
       ※ 山頭火俳句ポスト賞の発表もあります。(投句期間:23年11月~24年2月)
       ※ 当日は、フリーマーケットも準備しています。

山頭火の俳句にこだわるのでなく、自由な心で、自然のリズム感あふれる俳句を
あなたも作ってみませんか。

 英語で、自由律俳句は、Free Style Haiku と訳します。
山頭火の俳句にこだわるのでなく、
五・七・五であってもなくても
季語があってもなくても OKです。

自然を!人間を!、自分なりに自由に表現して新しい俳句を作ってみましょう。
芭蕉の言葉「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」が、その心です。

 《 募集要項 》

  ☆ 有季、定型・自由律のジャンルは問いません。
  ☆ ハガキ、FAXに 一人二句まで。<未発表作品を>
  ☆ 住所、氏名、年齢、連絡先電話の記入を。<小中高校生は、学年を>
  ☆ 投句料は、無料です。
  ☆ 入選句は新聞に掲載、記念品あり。
  ☆ 投句締切 4月21日(土)まで。
 
     送付先 〒799-2651
          愛媛県松山市堀江町甲1615ー3
           NPO法人まつやま山頭火倶楽部
    お問合せ
          Tel 090-6882-0004
          Fax 089-978-5959

  ※ 「俳句甲子園」に参加されている方、それ以外の高校生、
    ご応募お待ちしています。

2012年4月19日木曜日

一草庵「今月の山頭火句」(4月)

ひとりひつそり竹の子竹になる

 昭和9年「私はようやく『存在の世界』にかえって帰家穏座のここちがする」と日記にあるが、
其中庵という安住の地を得ての句。心穏やかな心境がでている。(ちとせ)

「山頭火は昭和7年9月20日、其中庵庵主となる。
この事実は、大満州国承認よりも、私には重大事実である」と日記にしたためる。
日々よい句を作っている。
  こころすなほに御飯がふいた  山頭火
しかし、翌年8年の5月頃から、山頭火の遊び心が顔を出し始めます。
昭和9年2月19日から27日、北九州へ旅立つ。
前日18日の日記には、「明日から東行前記ともいふべき、北九州めぐり、旅日記」と記す。

書・梅岡ちとせ

息子・健に、山頭火は「チチキトクスグコイ オオヤマ」の電報を出す。
会いに来た健に、「健か、すまん」
「今日はのう、信州から越後の方へ遠い旅をするので、一目でも会っておきたい思ったのだ」
山頭火は淋しく語り、そして、死を覚悟して旅に出るのだった。
昭和9年3月22日、井月の足跡を訪ねて東行の旅へ。
しかし、飯田で発病し、井月の墓参は果されず、4月28日其中庵へ帰ってくる。


 今月の山頭火句「竹の子の句」は、昭和9年7月1日の日記に出ている。
 晴、つつましくすなほな生活を誓う。
 △筍を観ていると、それを押し出す土の力と、伸びあがるそれ自身の力とを感じる。
 とあり、次の句も作っている。

    あをあをと竹の子の皮ぬいでひかる
   竹の子竹の子となった皮ぬいだ
   竹のこ伸びるよとんぼがとまる

  「草木塔」(山行水行)には、 「 ひとりひつそり竹の子竹になる」の句を、山頭火は選んでいる。
  庵に一人で住み、静かに現実を直視する。
 「ひとりひつそり」、「竹の子竹に」、このリズム感、誰がまねできようか。名句ですね。
 とり立ての美味しい筍を食べています。山頭火さんにも、差し上げたくなりました。

 この日の句には、
 うれしいこともかなしいことも草しげる
 もあります。この句も「草木塔」に選ばれています。
 
それでは、山頭火句の英訳を紹介しておきます。

Quietly, by itself -
 The bamboo shoot,
 Becomes bamboo.  ジェイムズ・グリーン
垣根に紅花常盤満作の咲く一草庵
   

2012年4月3日火曜日

太山寺の山頭火句碑を訪ねて

  春の朝、柔らかな日差しに誘われて、第52番札所「太山寺」にある山頭火句碑を目指し、一草庵を出発しました。
山頭火がどこを通って太山寺に行ったのか、詳しいことは私にはわかりませんが、おそらく遍路道を通ったのではないだろうかと思い、今回は一草庵前を通る遍路道を選びました。この遍路道は左の写真にあるようにずっと「大川」沿いを歩く道です。山頭火はこの川を眺めながら

    濁れる水の流れつつ澄む

と自らの境涯を詠んだと言われます。


今は花の季節です。大川沿いにはたくさんの桜が咲きはじめています。


一草庵から少し下ったところ、上の写真の桜の向こうに「千秋寺」があります。
千秋寺の境内には、山頭火の

トマトを掌に、みほとけのまへに、ちちははのまへに

の句碑があります。
来迎寺の桜
また、一草庵の近辺は寺町です。その境内にみごとな桜が植えられているお寺もあります。千秋寺からさらに先へ進むと、松山大学の薬草園があります。そこからしばらく大川に別れ右へ折れます。2分ほど行くと、「来迎寺」が右手にあります。ここの桜も立派です。


来迎寺をぐるっと回った裏側には日露戦争のとき捕虜となった人々を、現在まで手厚く祀っている「ロシア人墓地」があります。


伊予節にも歌われる十六日桜
また、江戸時代から全国にその名前を知られた「十六日桜」が植えられています。伝説のとおり早咲きの桜はもうすっかり葉桜になっていました。

その上にある「龍穏寺」には句碑が建てられており、西行や芭蕉と並んで山頭火の俳句も刻まれています。

 咲いて一りんほんに一りん



法華寺の桜





ちょっと寄り道をしてしまいましたが、元の道にもどりましょう。
法華寺の桜


来迎寺を少し行ったところにある法華寺の桜もまた見事です。次々と多くの人たちがそれを見に訪れていました。
法華寺を過ぎると、右側に「長建寺」が見えてきます。この境内も見るべきものが多々あります。写真の門を入って右を見ると、山頭火の立派な句碑もあります。

もりもりもりあがる雲へあゆむ






長建寺からまた大川沿いに遍路道は続きます。


遍路道がわからなくなって、迷うんじゃないかと心配しましたが、それは杞憂でした。さまざまな標識が案内してくれました。
まさしく山頭火が詠んだ俳句そのものでした。

石の指さすままに花野のみちはまよはず来た




一草庵からおよそ8キロメートル、やっと太山寺に着きました。一の門、二の門をくぐり、木立のそびえる荘厳な雰囲気の参道の傍らに山頭火の句碑が建てられていました。

                    もりもりもりあがる雲へあゆむ

  

この句は、昭和15年9月この太山寺で詠まれたといわれています。この雰囲気の中に佇む山頭火はいったいそのとき何を想ったのでしょうか。

四国八十八箇所霊場第五十二番札所太山寺本堂(国宝)
句碑をしばらく眺めた後、本堂へ行き般若心経を唱えました。そして、今日ここに生かされていることに感謝しつつ太山寺をあとにしました。