今週の山頭火句

今週の山頭火句 旅のかきおき書きかへておく  山頭火

2012年2月6日月曜日

一草庵「今月の山頭火句」(2月)

この道しかない春の雪ふる
一草庵前・休憩室

「私は長い間さまよつてゐた、からだだけでなく心もさまよつていた」昭和九年の日記より。
やっと見出した『存在の世界』これが山頭火の求めた道ー。しかし、この道も雪に逢うのは厳しい。(ちとせ)

この句は、昭和9年3月14日の其中日記にある。
夕方、伊東敬治君一升さげて、国森樹明君牛肉をさげて、久しぶりに三人で飲む。
として、次の句も載っている。

 雪ふりかゝる二人のなかのよいことは  


書・梅岡ちとせ

この今月の山頭火句は、自選句集「草木塔」の”山行水行”篇に選抜されている。
其中庵の生活にも、落ちついてきたのであろうか。
「帰家穏座とでもいひたいここちがする。私は長い間さまようてゐた。
…ようやくにして、在るものにおちつくことができた。そこに私自身を見出したのである。
…私は詩として私自身を表現しなければならない。それこそ私のつとめであり同時に私のねがいである。」
(昭和九年の秋、其中庵にて、山頭火)

「この道」とは、其中庵を生活の場とした句作の道のことだろうか。その道に春の雪がふる。
春の雪がとける道に、あたたかい、新らしい道を感じる山頭火がいるようだ。「春の雪」に思いがこもる。

京都・哲学の道の西田幾多郎の歌碑
「人は人吾はわれ也 とにかく吾行く道を吾行くなり」
のような力強さよりも、山頭火の句に、何故か人間味を感じる。

大山澄太さんが涙した山頭火の句を思い出した。
 わかれてからの毎日雪ふる  山頭火

(NPO法人でDVD化した大山澄太先生(91歳)の講演「俳禅一味の山頭火」より)
一浴一杯、一人一室、一燈一机、あんたのところが一番いい宿だといって
うしろをふりかえらず行乞にでた
 振りかえらない道がまつすぐ
の山頭火から、10日たって届いた句なんです。
家内と涙しながら読みました。

山頭火自筆の句みつかる蓮田善明の長男所有
 へふへふとして水を味ふ
http://kumanichi.com/news/local/main/20120120001.shtml
の記事が、熊本日日新聞2012.1.20に発表された。
折りしも、昭和9年3月23日の山頭火の日記にその記載があった。
「…澄太居を訪ね、澄太居に落ちつく、夫妻の温情を今更のように感じる。
…夜は親しい集まり、黙壺、後藤、池田、蓮田君。
近来にない気持ちのよい酒だつた、ぐつすりと眠れた。」

(斉藤清衛の弟子の後藤貞夫君、その先輩である広島文理大の蓮田善明、池田勉さんも
一緒に来てくれて大いに語り合った日のことは、小高根二郎著『蓮田善明とその死』にも
詳しくでている。=大山澄太)

※<活躍中の評論家蓮田善明氏は、初めて「三島由紀夫」のペンネームを使った小説『花ざかりの森』を称賛する。
三島由紀夫は蓮田から思想的影響を受ける。>
皆さんなりに、勉強してみてください。

それでは、山頭火句の英訳を紹介しておきます。
this is the only path
spring snow falling      宮下恵美子